味付け茹たまご


それは、今年の4月のことであった。こちらのサイトの伝言板で、ある怪しげなゆで卵のことで猛烈な?議論が交わされていたのである。そのゆで卵とは、殻には何の異常もないのに、殻の内側の卵、それも黄身だけに塩味が付いていると言うもの。そういえば、何年か前にテレビ(多分めざましテレビ)でカレー味のゆで卵が紹介されているのを見たことがある。それと同類のものかもしれないが、確かに、あやしい

そこで怪しいもの大好きの突撃実験室では、調査を開始した。で、それはそれは長いことかかって、尚且つサボりにサボって、今ごろ記事を書いているわけね。まあまずは、問題の卵の実物を探すことにした。その頃、ローソンでバイトしていた友人曰く「それ、うちの店で売ってたよ」だって。コンビニで売ってるとは拍子抜け、その友人が言う通り、問題の塩味ゆで卵が近所のローソンで売られているのを見付けたので買ってきた。



問題は、これがどう作られているかを解明することであった。殻には何の異常も見当たらないのに、その中身にだけに塩味が付いているのだから、当然何らかの仕掛けがあるはずだ。そうそう、ラベルを見れば食塩の他に調味料(アミノ酸)の表示もあり、これはグルタミン酸ナトリウムのことと思われる。なるほど、ただの塩味以外にも、うまみ成分を付け加えていたわけだ。まあ細かい話はおいといて、市販品を分析してみよう。



殻を割って半分に切ったところ。パーフェクトとも言える仕上がりのゆで卵だ。黄身だけに塩味が付いていると言う話もあったが、こいつは白身にもうっすらと塩味が付いていた。ただ、分析のために白身と黄身を別々に食ってみたから気付いたことで、黄身の方が塩味が濃いので、普通に食っただけの場合は黄身だけに塩味が付いているように感じるかも知れない。んで、個人的感想だが、けっこう美味しい。ただの塩味だけでなく、甘みがあってうまいと思えるのは、グルタミン酸も含まれているからかな。

実はこのゆで卵、こちらのサイトで作られている。詳しくは同サイトを見られたいが、要は、卵殻には無数の細かい穴があいているらしく、物質がここを通過できたりするらしい。ただ、そのままでは穴が小さすぎてナトリウムイオンとか塩化物イオンとかが通過できないため、殻を薬品で処理して(言い換えれば、溶かして)、穴を広げてやれば良いそうだ。そこで、そのサイトでは卵を塩酸で処理されている。そう言われてみれば、市販品の塩味卵の殻の感触は、生卵と少し違う気がする。これは、塩酸処理の結果かも知れない。



突撃実験室でも、マネをして塩酸処理をやってみた。うすい塩酸に生卵を浸けてみると、卵殻は炭酸カルシウムか何かが主成分なのだろう、塩酸と反応してすぐに泡が出てくる。炭カルであれば、泡は当然のことながら炭酸ガスだ。



当然だが、ゆで卵にするには、ゆでるだけ。これも当然であるが、塩味を付ける必要があるのだから、かなり濃い食塩水を使うのだ。比較用として、非塩酸処理の卵も一緒に入れてみた。余談だが、非塩酸処理の方にはマジックで「非」と書いておいた。すると、茹で上がったら「非」の文字が卵の白身に転写していたのだ。このことからも、卵の殻を物質が通過できることが言える。



で、これが出来上がった塩酸処理済みゆで卵。見たところは普通のゆで卵...しかし、かすかだが塩味が感じられた。ところが市販品と比べると、明らかに塩味が足りない。塩酸の処理の時間が足りなかったのか、それとも食塩水が薄すぎたのだろうか、理由はよく分からないが、非塩酸処理の方と比べれば塩味があるかなって程度に終わってしまった。まあ、その辺は工夫すればどうにかなることだろうから、一応はこれでよしとしよう。


もう一つ、テレビでやってたカレー味の卵も非常に気になるところ。しかし、これはいくら探しても見つからなかった。また別の友人から、大阪の谷町6丁目のローソンで売っていると言う情報を入手。早速行ってみたが、店には無かった。そこの店長らしき方に尋ねてみると「前は置いてたが、出が悪いのでやめた」とのこと。存在だけは確認できた。

仕方が無い、これも同じく塩酸で処理した卵を使う。ただし、食塩水で茹でるのではなくて、レトルトカレーで茹でるのだ。



レトルトのカレーを鍋にぶちまけて、そこに生卵を入れたところ。カレーの量が少ないので、卵を転がらせるように茹でた。そして煮詰めながら待つこと20分ほど...



家中がカレーの香りで充満していた。そんな中、殻を剥いてみたものがこれ。カレーの量が少なかったためか、火の通りが悪く、やや生っぽかっい。が、気にせず食う。うーん、こりゃ普通の半熟卵、カレーの味なんて全然しない。つまり、失敗と言うわけだ。そういえば、テレビで紹介されていたときにも「製法は企業秘密です」なんて言ってた記憶がある。企業秘密ってことは、かなり難しいのかも知れない。

レトルトのカレーに、塩酸に浸した生卵を入れ、それを煮詰めている風景を発見した母親は、白い目で見ていた。更に、濃くなったレトルトカレーをお湯でうすめ、それをご飯にかけてお昼にした私も私だが。もう味なんか変わってしまって、不味かったっすよ。レトルトカレーは、むやみに煮詰めても美味しくなりません


突撃実験室号外


思えば、卵の実験も色々とやってみたものだ



圧力鍋でゆで卵を作ったらどうなるかと、実験してみたこともある
だからどうって感じだが、こいつはドイツのシリット社製の高いやつ



すると、殻はボロボロになり、変色した変なゆで卵になった
しかし味はけっこういける




うちには、ゆで卵専用機なんてものも存在する
ゆで卵の他に、温泉卵も作れる代物だ
しかし、ただでさえ狭い台所には邪魔ってものだね


以上



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