Aterm IW60HS DSU の念写




NECのターミナルアダプタである、Aterm IW60HS DSU を買った。

こいつは、PHS端末を子機として収容できるのが魅力なのだ。380MHz 帯を使うアナログコードレス電話機は、つまるところFM無線機だから、近所中に「聞いて下さい」と宣伝しているようなものだ。そのうえ、電話帳といった機能もなく、使い勝手が良いとは言えない。だから、コードレスの子機はPHSが良いと思ったわけだ。

こういうものを買ったら、まず何をするか?



その回答の一つとして、上図が挙げられるだろう。しかし、こいつは電波を使う無線局であるから、分解すると法に触れることは、もはや言うまでもない。だから、今回は念写により、中を拝見することとした。

まず、メイン基板を念写してみよう。どうやら、こいつには CPU などのロジック部分や、アナログポート周辺回路などが乗っているように見える。基板の上には、村田のスイッチング電源(ベーク色の基板)が、二階建て状態で載せられていたようだ。



写真右下に位置するQFPなICが、V821。V810をコアとした、NEC製のRISCマイコンだ。その上にあるのが、恐らくSEC製のDRAM。写真左上に2個乗っているのは、ファームウェアの保存場所と思われるフラッシュメモリだ。富士通製の29F800である。



その他に、こんな巨大なICも張り付いていた。通信用のプロセッサか何かと思われるが、詳細は不明。次は、回線インターフェース部を念写してみた。



毎度お馴染みの、AM79R70が2個。こいつはAMDのアナログ回線インターフェースICで、最近売られているTAの大半は、アナログポート用にこいつを使っている気がする。また、写真には写っていないが、同じくAMDのISDN回線インターフェースであるAM79C30Aも1個使われている。



DSU/PHS無線部が乗った基板を念写してみた。DSU基板と言っても、こいつがDSU的な仕事をしている部分と言えば、ISDNのU点を物理的に配置してある程度。残りの処理は、全て基板の上に二階建て構造で取り付けられている沖電気のDSUモジュールに任されている。



二階建てになった、DSUモジュールの下にも色々とついているようなのだが、念写には失敗した。場所的に、PHSのロジック部ではないかと推測される。



こいつが、PHSの無線部。高周波部分は、このシールドされたモジュールの中に全て納められており、自前で設計したような部分は見当たらない。写真中央上部の、小さな丸いコネクタが、アンテナへ繋がる同軸のコネクタだ。

写真左側に見える、白いコネクタはS点ユニットを取り付けるコネクタだ。S点ユニットといっても、実は大したものではない。



コネクタとトランス、それにサージアブソーバとDC-DCコンバータが乗っている程度のものであった。

TAの中身など、各社ともに似たようなものだ。CPUなどのロジック、DSU、ISDNインターフェース、アナログ回線インターフェース、という構成はメーカーが違っても同一である。従って、どこのTAを買っても大した違いはない。どうでも良いような細々とした機能でカタログを華やかに飾って差別化を図ったり、あるいはイメージ戦略で売っているという感は否めない。Aterm IW60HS DSU は、PHS関係の回路が入っている分、特殊な部類である。

だが、設計の善し悪しはある。ファームにバグがあったり、原因不明のハングアップを起こしたり、アナログポートのレベルが大きすぎて耳が割れそうだったり。民生用でも、それなりにミッションクリティカルな機器であるだけに、機能が同じであれば、信頼性の高いものを選ぶべきなのは、言うまでもない。

Aterm シリーズは、よく売れているらしい。出始めの頃は悪い噂もあったが、最近では聞かなくなった。わたしは、アナログポートしか使っていないが、その点では申し分が無く、全体的なバランスは良い感じがする。特に、PHSの収容といった個性的な機能を持つ商品は、TAのラインアップには見られなかっただけに、目の付け所は良いと思う。



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