春に香るお風呂洗剤


初春。若干の肌寒さは残るとは言え、柔らかに降り注ぐ日差しに包まれた
陽気は何とも言えず心地よく、ふと丘の上の公園に立ち寄ってみれば、
冬木の枝にはもう若葉の蕾が成り、まだ春が来たばかりだと言うのに、
気早くも初夏の到来を予告するかのようだ。

しかし、柵の向こうを見渡せば、みなとみらい21の摩天楼が聳え立つ。
そんな都会の喧噪から小鳥達の囀りを聞き分けようと耳を澄まし目を瞑れば、
あの日この場所で、あなたと出会ったことを想い出す。忘れないで欲しい、
二人で過ごした穢れ無き日々の想い出を、二人だけの甘く切ない想い出を。

零れ落ちる涙。癒されることのない心にそよぐを淡い春風は、何故か、



お風呂洗剤の香りがする。

[ これは神の悪戯なのか? ]


いや、そうではないという情報を頂いた。

何となくお風呂洗剤のような香りは、実は
沈丁花 という花の仕業らしい。

沈丁花はどこにでも生えているそうで、初春になると咲く花は甘い
香りがする。その香りは、ルックのお風呂洗剤とよく似ているのだ。



その気になって探すと、道端とか適当な所にもよく植えられている。




ジンチョウゲ科ジンチョウゲ


冒頭の話は思いっきりフィクションです。念のため...

でも舞台は、横浜市西区にある掃部山公園という実在する場所です。



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