連作「花柳」  美しき豆美(まめよし)と過ごした時間をかみしめつつ謂す歌七首



樹々さやぐ坪庭を見る豆美の白きうなじに春風の吹く


朱に燃ゆる燐寸に吹かむくちびるのとがりぬる先の紅ぞあでやか


藤波の着物の裾のはらはらと宵にまばゆし赤の襦袢も


燐寸の火を消さむとおほふ左手のやはらかきかな触れはできねど


たまさかに杯をもつ手の触れにけれごめんやすと云ひ目な見つめそね


豆美の左のたもと色を思ひたばこは燐寸で火をともすべし


眠りたる二条の宵に照る月のだいだい色の濃きぞあやしき


                        平成壱拾六年五月五日   斎藤知宏