名歌で学習 第四回

 天皇の聖躬不豫(みやまい)したまふ時に、大后の奉る御歌一首

天の原振り放け見れば大君の御寿は長く天足らしたり  倭大后
あまのはら ふりさけみれば おほきみの みいのちはながく あまたらしたり


 今回も万葉から。第三十九代天智天皇の皇后倭姫です。古人大兄皇子の娘です。
 天皇の病状が重くなったときの歌ですが、「聖躬不豫」(御病のことだろうと思われる)とある歌を、
挽歌の部に載せています。これは、崩御が近いということを認めてのものかという説が濃厚。
 しかし、切迫している状況であるのに歌は、あるべしとか、希望の形で作らず、御寿は長いと勝手に断定しています。
あるべきさまを断定によって定着させようという祈りの歌、と言うことで、今回分解してみます。


まずは歌意から。
1.天空を
2.振り仰いで見ていると
3.大君の(天智天皇の)
4.命は長く
5.この大空に満ちあふれている


 今回は特に技巧的な問題点はなく、言葉さえはっきりすればすらっと読めますね。
結句の天足らしたりが、万葉的というか、宗教的色合いが強いような気がします。
昼か夜かはっきりわかりませんので推測になりますが、天皇は北極星と同義とされてきはじめた頃なので、
北極星がでており、その周辺を星が光っている、という意味にもとれます。
なんにせよ、はっきりとした情報がありませんので、推測ですが。


それでは、恒例の分解を。
★天の原=名詞。空のことです。神話的にいうと高天原を指しますが、関係あるかどうかはわかりません。

★振り放け見れば=振り放け見る(他・上一)。遠くを眺め上げると言う意味です。
これに接続助詞「ば」がくっついていますが、見ればと已然形なので、確定条件です。
見ば、とやれば見たならば。しつこいですね。でも重要。
「振り」は勢いのあることを表す接頭語、という説もあるようです。(15/11/19追加)

★御寿は長く=珍しい四句の字余りです。が、アイウオが入っているので、リズムはそのままですね。みーのちは、という感じです。これは後日、ちゃんと書きます。

★足らしたり=足る(自・四)に尊敬の「す」、継続の「たり」です。
尊敬の「す」は未然形に接続なので、「足ら」が確定します。
継続の「たり」は連用形に接続なので、「す」は「し」になり、「足らし」が確定します。
「たり」は終止形で終わるので、「足らしたり」。
意味としては満ちあふれているでいいんですが、すめらみことの御寿のことを歌っているので、尊敬が入ると言った感じでしょう。
使役とかぶらないように注意。若干違います。


 さて、四回目も無事に終了しました。
足らしたりはちょっと考えましたが、活用と接続条件から探していけばすぐ見つかります。
古典は天皇が身近にいる人の歌もあり、尊敬という概念が入ってきます。
源氏物語とかに強い人は楽でしょうが、眠りこけていた俺は調べないといけません。
時代によって歌作りの環境が違うので、その時代背景を考えつつ読みましょう。では、また次回。

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