名歌で学習 第六回

思ひ川絶えず流るる水の泡のうたかた人に逢はで消えめや  伊勢
おもひがわたえずながるるみずのあわの うたかたひとにあはできえめや

 久しぶりに古今系の歌から。古今にも新古今にものっていないので、恐らくマイナーな歌です。俊成三十六人歌合という所から拾ってきました。後選にも入っているとか(持ってないので確認できません)。
 この歌、長いあいだ男に連絡を取らなかったところ、男から生きてるのか?という連絡が来たので歌った歌だそうです。女の情念、恐ろしや。と言うことを今から実感していきましょう。

まずは大雑把に歌意から。簡単なので、いらない気もしますが。
1.思いが絶えないことを川に譬えたもの。
2.絶えず流れている
3.水の泡の
この上三句が「うたかた」を導く序です。
うたかたには、水の泡と「決して」という両義があります。決しての方は、うたがた、が元だったようです。
4.決して、あなたに
5.逢わずに消えるもんですか。(原義:消えようと思いますか? いや、思いません)

ここまで読めばこういう女の恐ろしさが実感できると思いますが(笑)、
文法を細切れにしていきましょう。

★思ひ川=おもひがわ。辞書にも思川として載っていました。
意味も辞書のまま、思いが深く絶えないことを、川に譬えた言葉です。
ほかに出元がないので、伊勢さんの造語の可能性ありです。

★絶えず=副詞でそのまま「絶えず」です。
絶やす(他・四)と絶えす(自・サ変)の線も考えましたが、打消ずは未然形に接続ですので、絶やす(他・四)なら絶やさずになり、絶えす(自・サ変)なら絶えせずになります。と言うことで副詞でしょう。

★流るる=流る(自下二)の連体形で「流るる」です。
三句の「水の泡の」にかかるので連体形。

★うたかた=普通は水の泡のことです。儚いなどの意味もあります。更に、決してという意味もあります。
この場合は、決してと言う方が強く出ているような気がします。
もともと、うたがたといっていたそうですが、うたかたになりました。

★人に=まぁ、解説するほどでもないですが。
人は彼氏のことです。現代ではほとんど君と表現されていますが、古典では人が彼氏彼女を表し、君と言えば普通すめらみことの事ですね。大君とか。
それに、接続助詞にがくっついています。

★逢はで=逢ふ(自・四)と打消の接続助詞で、です。
「で」は未然形に接続ですので、逢ふは逢はになります。
逢わないで、と言う意味です。

★消えめや=消ゆ(自・下二)、意志の助動詞む、係助詞や、の連結です。
「む」は未然形に接続するので、消え−む、が確定します。
係助詞はいろいろな付き方がありますが、已然形に接続で反語なので、むがめになり消えめやが確定します。
消えるか?いや、絶対消えん!っていうこの気迫に、女の恐ろしさを感じます。


 今回はいちいちめんどくさいだけで、特に引っかかるような難しいものは出てきていませんね。まぁ、なんというか、この怖い歌を見つけたので載せただけです。

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