名歌で学習 第七回

 櫻のもみぢしはじめたるを見て

いつの間に紅葉しぬらむ山ざくら昨日か花の散るを惜しみし  中務卿具平親王
いつのまにもみじしぬらむやまざくら きのうかはなのちるをおしみし

 今回は(まともに)季節にあわせて新古今集第五巻秋歌下から引っ張ってきました。
文法は難しくないですが、句の係り方、つなぎ方の勉強になるんじゃないかな、と言うことでの選択です。


まずは歌意から。簡単なので、適当めに行きます。
1.いつの間に
2.紅葉したんだろうか
3.山桜は。
4.まじで、昨日じゃなかったかな、花が
5.散るのを惜しんだのはなぁ、しみじみ


 新古今なので、写生の歌かは甚だ疑問ですが、作り方としてはベタな感じでわかりやすいですね。
現代若者風に意訳すれば「おいおい、まじかよ。もう赤くなってるわ、昨日花が散ってたんじゃないのか」てな感じでしょうか。特にこの訳は意味がないですね(悲)。
 選んだもう一つの理由は、嘱目の景(じゃないかもしれないが)の序詞がないというのもあります。
今まで取り上げた古今風の歌とは違いさらっと読んでいると言うことです。
追記:「具平親王の生きた時代は応和4年(964)から寛弘6年(1009)で、
一条天皇の信任が厚かった当時の文壇の推進者・保護者として有名な人物」、とのご指摘を頂きました。
すなわち、題詠とは限らない、と言うことを追記しておきます。


 ちょっとわかりにくいのは、二句の「紅葉しぬらむ」ですね。
これは終止形も連体形も同じ「らむ」なので、判断が付けにくいと思います。
二区切れかなとも思うわけですが、詞書で櫻(桜)の赤くなったのを見て、と書いてあるので、
紅葉しぬらむは桜のことだとわかります。
なら、倒置のような形で「いつの間に赤くなったんだろう、山桜は。」と連体形だと考える方が自然です。
もっとも新古今なので57調はしないでしょうが。


では、文法など。
★紅葉しぬらむ=紅葉(名詞)、す(自・サ変)、ぬ(完了、強意助動詞)、らむ(現在推量助動詞)の四つがつながっています。
紅葉はもみずという動詞もあるのですが、今回は名詞でしょう。
紅葉す、に「ぬ」は連用形に接続なので、紅葉し−ぬ、が確定です。
紅葉しぬだけなら、紅葉した、ですがここにらむがつきます。
らむは終止形に接続するので、紅葉しぬはそのまま、紅葉しぬらむ、となります。「らむ」は現在の推量なので、過去の推量「けむ」とは色が違います。
一応過去形ですが、ごく最近紅葉した、ととらえればいいでしょう。

★昨日か=昨日はそのままです。係助詞か、の二語です。
「か」の意味は疑問、不定、反語などいろいろありますが、この場面では(この使い方では)反語ではないでしょう。まあ、無難に疑問ですね。
昨日だろうか、という感じです。
前に書きましたが、人に問いかけるときは「や」です。「か」は音がきついので人に使うのはよろしくないとされていました。昔、ですけどね。
この場合は自問、もしくは木に向かっていっているような感じなのでOKでしょう。

★散るを=散る(自・四)と、格助詞を、です。
散るのを、散っているのを(散る場面を)、という感じでとらえればいいでしょう。
間違えないとは思いますが一応。「を」を接続助詞の方だと思ってしまうと、散っているのに、となってしまうので注意が必要です。どちらも連体形につくので文脈で見分けて下さい。接続助詞は体言には付きませんが。

★惜しみし=惜しむ(他・四)、過去・回想の助動詞き、です。
惜しむは形容詞ヲシを動詞化したものらしいです。
「き」は連用形に接続するので、惜しみ−き、が確定します。
ここで四句の「昨日か」の係助詞を受けて、「き」が「し」に変化します。
惜しみし。

今回は言葉が簡単でわかりやすい反面、係り方の勉強になりました。
短歌のような詞形式の場合、どの単語がどこにつながっているかというのは文法だけでは判断できないこともありますので、こういう歌で勘も磨きましょう。
まあ、ちょっとくらい間違えても大差ないこともありますが、せっかく歌をやってるならきっちり理解できた方がいいですもんね。それでこそわかる歌もあるかも知れないし。
と言うことで、また次回。

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