なんとか短歌入門という類の本は、わしも何冊か買ってみました。確かにいいことは書いてあるんですが、初心者(というか、始める前の人)には少し難しいような気もします。書き方も堅苦しいし、言っていることも難しい。今まで自分の言いたいことを表現できなかった人が、果たしてあの手の本で表現できるようになるかと言えば微妙です。
で、そういう人たちをごそっと、どっぷり短歌につけてしまいたいわしとしては、もうちょっと簡単に、裏技チックに制作現場を書こうと思います。こういうのを見ると、感動したあの人のあの歌がこんな風に作られていたのか、なんてショックを受けることもあるかも知れませんが、額田王の茜さす〜だって宴会の席での歌ですからね。自分でやっておきながらこういう事には賛否両論あるかと思うけども、やらないよりはましだと思います。ってことで、早速いってみましょう。
さて、歌を始めようと思ったけど、まずは何からするんだ、という疑問がわくでしょう。順番に行きますよ〜。
とりあえず、辞書を用意しておきましょう。他にも漢和辞典や文法辞典などいろいろな本があれば便利です。最低限、辞書が要ります。簡単な奴で結構です。
ありましたか? そいつは、脇に置いておきましょう。
まず、歌を作りたいという気持ちはありますか? 衝動的に吐き出したくなるというか。それがあればまずは一歩前進です。
次に(同時に)、視覚的なイメージや完成図のイメージを思い浮かべましょう(もしくは、自然に思い浮かぶ)。
さあ、ここまでは他人ではどうしようもありません。花見に行って桜を見て感動するも良し、今好きな人のことを思うも良し、題材は何でも良いわけですから、あなたが歌にしたいということを決めましょう。
決めた? じゃあ、実際作っていく段階に入っていきましょう。
大雑把にわけて、3種類の作り方があります。順番に見ていきましょう。
0.始めからすらすらと文語で57577になり、手を加えるところがない。
いや、そんな人はそういないでしょう。子規も茂吉も歌論を見ているとどうもこうやって作ったようには思えません。辞書を引きながら、どう並べると良いか、言葉はどっちが良いか、なんて考えながら作っているように思えます。
ちゅーか、こういう風に作れるならこんなモン見んでいいでしょうが。
ここまでできればすごいですが、慢心には注意しましょう。
1.<メモ魔な作り方>書きたい内容を思いついたらイメージを膨らませメモをしまくり、それをまとめて歌に整える。
上で述べたように作りたい歌が決まったら、それをメモします。そのうえでイメージを膨らませ、歌意を決めます。大筋を作るわけです。
それを口語なり文語なりの文法に則りながら、言葉も最適なもの(同じような意味の言葉をいくつか探してみましょう)を探していくというのが、この作り方です。(わしは最近、専らこの方法で作っています)
何のメモを取るのか、というと全部です。
作りたいと思ったことも書きましょう(結構忘れます)。
それに関するイメージ・歌意を書きましょう(花はきれい、はかない、強い、等。この発想次第で個人差がでるでしょう)。
そのイメージをより明確に言える言葉も書きましょう(実際使う言葉。動詞ならば変化するので、活用形もメモると便利ですし、覚えます)。あくどく、どんな流れにするかのシナリオもかいてしまいましょう。
ネタが出そろったら、組み合わせを考えていき、メモっていきましょう。
で、一番いい感じになったら何度も読み返して、無理がなければ完成というわけです。
では、制作現場の再現を。
火星接近とかで、火星の歌がブームだったので、あやかってみました。長く作らなかったので、きっかけというのがホンネですね。
わしは「星くず」という言葉があまり好きではありません。くずとは何だって気がします。そんなこと言う人間だって、星から見ればろくな居住者じゃない、と。
火星はマーズ、アレス等、ローマ・ギリシャ神話では軍神とされています。我々は火星接近ブームで、みんなして火星を見ているけど、その火星=軍神が、地球をどんな風に見ているか、という構図に決めました。
軍神なので、見てると言う感じの言葉じゃいかんでしょう。丁寧にしておかないと。「如何、御覧。」
地球の特徴を考えます。戦争が絶えません。血が流れています(マグマ、プレートというものもほんのり意識していますが)。青い星です。謙譲語ではないですが、軍神の前で、すばらしい地球様々というのもなんなので、「青き星くず」と一歩引いたシニカルな感じの言葉を使います。
「軍神は如何御覧や」軍神はどのように御覧になっていますか?
「絶え間なく血の流れたる青き星くず」
この時点で、あまり並び替える余地がなかったので、
「軍神は如何御覧や絶え間なく血の流れたる青き星くず」
となりました。めでたし。
利点は、始めに中身が出来ているので頭の暴走が押さえられます。特に初心者はビジュアル系音楽の人らのような言葉を使ってしまいがちですが(言葉負けするというか)、辞書引き+文法確認しながら歌の形に整えるという作業で冷静になれます。つまり言葉の選択がしやすい。書いている途中に暴走して結局出来たら訳わからん、というのは防ぎやすいでしょう。とりあえずは、自分の知っている言葉を確認しながら表現していくと良いでしょう。
欠点は、ちゃんと31文字に入る範囲かどうか(内容を詰め込みやすいので、詰め込みがちになる)と、生き生きとした歌に出来るか(冷静に作るので、理に走るかも)ですね。
欠点の対策は、一首の範囲内かどうかは実際作ってみながら選択するしかなさそうです。しかし慣れてくればそれもさほど難しいものではありません。メモ自体もくっつけたりわけたりすればより柔軟に作れるでしょう。
生き生きとした歌に出来るか、というのは作り方以前の問題でもありますが、歌を作ろうと思った気持ちが本物なら、あとは表現の仕方だと思うので、まぁ、なんとかやってみましょう。ここでは、上手い下手よりもまず作ったことのない人が始めの一歩を踏み出すためのページですから、いきなりすばらしいものを作ろうと企まずに、地味な一歩を踏み出しましょう。
2.<天才肌な詩人の作り方>思いついたフレーズに、足らない部分をはめ込んでいく。
上で決めた歌の題材を、見たり聞いたり考えたり、どんどん膨らませます。どっぷり世界に入ります。何か、言葉がふっとでてきますよね。始めから言葉と完成図が出来ていればなお良しです。
それで浮かんだフレーズ(もしくは、すでに思いついていたフレーズ)の、足らない部分を足していって完成させるというのがこの方法です。上の句でも、下の句でも、どこでも良いので思いついたところから取り組んでいきましょう。(知人に協力してもらったアンケートでも、意外に多かったです。わしも、昔はこの方法を多用していました。ひらめいているうちはぼこぼこ作れてものすごくやりやすいです)
恐らく、初心のうちは1よりも、こちらの方法の人が多いと思います。(あくまで想像)
では、実際作った様子を再現してみます。
仕事の際、外にでると日差しがえげつなくきつかったんですが、最近はそれがましになってきました。日差しが柔らかくなった。「やはらかな日の降り注ぐ」というフレーズを思いつきました(仕事しろ)。57です(この際、57調にする事に決めました)。
日差しがきつくなくなってきた、ということは夏が終わりかけているんだろう、ということで、ありがちな句ですが、「夏過ぎて秋来にけらし」の57を使おうと思いました。持統天皇の「春過ぎて夏来るらし」と同じようなものですね。子規もこの類の句をよく使っています。
で、いつも暑いなと感じる場所は、たいてい店の裏路地なので「午後の路地裏」としました。
並べてみると、「やはらかな日の降り注ぐ」「夏過ぎて秋来にけらし」「午後の路地裏」の3つのフレーズです。57,57,7となっています。しかし、このままの順番では意味が通じませんから、「夏過ぎて秋来にけらし」「やはらかな日の降り注ぐ」「午後の路地裏」このように並べ替えました。
「夏過ぎて秋来にけらしやはらかな日の降り注ぐ午後の路地裏」
といった感じで、できあがりです。もちろん、思いついたフレーズを忘れてしまう方(はーい)はそれを忘れないようにメモしておいた方がいいでしょう。
利点は、ひらめいている間は、自分でもびっくりするぐらいどんどんできること。
欠点は、作りたい歌があるけど、言葉がすらすらでてこないときにはとんでもない袋小路にはまりこむということ。
似たような理由で、数も少なくなりがちです。余程天才的な詩才があってどんどん書ける人は別ですが、平凡?な能力ではそこまでいけない、というのが理由かと思います。
暴走・脱線が防ぎにくい。イメージとフレーズで作ってしまえますから、ブレーキが利きにくいと言えるでしょう。
対策:思いついたフレーズを元に、作りたい歌意を文章化してみると良いでしょう。そのときに、フレーズが使えなくなることも多々ありますが(汗)それはそれ、ざっくり切り捨てます。もしくは、とりあえずおいといて考え直します。
暴走し始めたな、と思ったら、いったん頭を冷やして客観的に見る。
まとめ
1.<メモ魔な作り方>メモ+歌意決定の後作る方法
タイプ:秀才型・参謀本部型
利点:大筋が決まっているので、暴走・脱線の恐れが少ない。
比較的冷静に作れるので言葉の選択がしやすい。
欠点:大筋を決める際、内容を詰め込みすぎてしまいがち。
冷静に作る故、理詰めになる恐れがある。生き生きした歌にならない。
対策:内容詰め込みすぎは、作ってみて多すぎたら削る、すくなすぎたら足すなどの臨機応変な対応でまとめる。これは場慣れすれば解決。
理詰めになる、生き生きした歌にならないのは、作り方以前の問題で、気持ちが本物であれば表現方法次第でしょう。その他の項を読んで下さい。
2.<天才肌な詩人の作り方>思いついたフレーズに付け足していく方法
タイプ:天才型・ナポレオン型
利点:波に乗るとものすごくいいテンポで作れる。
欠点:乗れないと簡単にスランプに陥る。
イメージはあっても、フレーズがでてこないと寡作になりがち。
イメージ+フレーズで作るため、暴走・脱線が防ぎにくい。
対策:フレーズが思いついたら、そこから作りたい内容を文章化し、歌をまとめていく。その際、元のフレーズが使えなくなることがあるが、執着しない。
寡作対策は良いものを見て聞いて感じて、心を豊かにする。いちいち感動する。
暴走・脱線対策は、作りながら客観的に見る。
結局、どちらが優れているかではなくタイプの違いですので、両者のおいしいところを頂いちゃうと良いでしょう。自分がどういう作り方をしているか、まず見つめて下さい。
題詠について
始めに題詠とは。題詠とは歌会や結社から、お題を出されて、それに沿って詠むことを言います。9月でしたら、月や秋の長雨あたりが題になるんでしょうか。わし自身はどこにも属していないし、自分で作りたいと思わない限り嫌なわがまま人間なので、実際どんな題がでているかは良く知りません(ごめんなさい)。その言葉を入れないといけない(たとえば「月」と入れないといけない所もあるでしょうし、「月」のことを歌えばいいと言うところもあるでしょう。要、確認)
短歌会さんのサイトでは月に2つ程度の題を出して、掲示板に載せあっているので、そういうのも題詠に含む、といっても良いかも知れませんね。どこぞの歌会のお題をぱくって来れば、題自体は集まるでしょう(素直に参加しましょう)。自分で題詠もどきに「火星」とか決めてみても良いわけですが。
さて、題詠の定義なんかはこんなもんでおいといて、上で述べた作り方ですが、肝心の題材選びは本人次第でしたね。しかし、今から始めようと思っている人がいきなり具体的な題材を選べるかどうかと言うのは疑問も残ります(もちろん、選べる人もいるでしょうが)。そこで一つの手段として、題詠をおすすめします。題を決めて詠む、ということは初めての人だけでなく、作歌の練習になると思います。
自分でネタを決められないとき(平凡な毎日だったり、いろいろありすぎて頭が混乱しているとき)に、会からの題などに沿えば、とりあえずは落ち着いて作れるかも知れません。
「始めの一首」も、こだわりすぎて作れないと言うこともありますので気楽に題詠で作るのも良いかも知れません。