味付けゆで卵・超音波編


当実験室では、「味付け茹たまご」と「続・味付け茹たまご」において紹介し、他のサイトではFast & Firstこれとかこれとかこれで、またくりこまあいらんどこちらにおいて紹介されている味付けゆで卵。だが、その製造法は謎のベールに包まれており、それを解明しようとした数々の実験はさることながら、検索エンジンでズバリ「味付けゆで卵」というキーワードで引っかけて本サイトに辿り着く方々の多さも、その関心の高さを如実に表している。

味付けゆで卵をご存じでない方は、先に上記リンク先を見られたいが、簡単に説明すると、殻がついたままなのに、食塩やグルタミン酸ナトリウムなどの調味料で味付けされた、ゆで卵のことである。一説には、黄身だけに味が付けられていると言われたが、わたしが知る限りでは、そのような市販品は存在せず、また色々と試したが、どうしても白身が若干ながら味付けされてしまい、再現は不可能であった。だが、何らかの方法で味を浸透させると、黄身の方が白身よりも濃く味が付き、しかも白身と黄身を同時に囓ると、黄身だけに味が付いているように錯覚することも自分の舌で確認している。従って、これは味覚の問題ではないかと思う。

さて、前回の実験から1年半が経過したが、その間に超音波による味の浸透と題された、本多電子という超音波関係を得意とされる会社のページを発見した。それによれば、市販されている味付けゆで卵は、卵に超音波を照射することにより、効率的に味を浸透させて作っているらしい。なぜ、超音波が味を浸透させるかは、良く分からない。細かな振動が、卵の殻に存在する無数の穴に食塩などの分子を押し通す際の手助けとなるのだろうか? いずれにせよ、面白そうである。



早速、家庭でも超音波を用いて卵に味を浸透させられるのかどうかを検証すべく、超音波洗浄機を購入し(秋月電子で6400円)、実験を行った。



まず、こちらが購入した超音波洗浄機である。早速、眼鏡などを入れてお掃除してみたが、確かに隅々まで綺麗になる。その動作原理は詳しく知らないが、超音波により水中に無数の細かい気泡が生成され、それが水中で弾けるときに起きる衝撃によって汚れが除去されるらしい。今回は、その衝撃とやらで卵に味を付けようと言うわけだ。



まず、生卵を 150ml の水に塩酸を数滴入れ、数分間浸して殻を処理する()。最初は塩酸は使わず、普通の生卵に後述の超音波照射を行って味の浸透を試みたが、30分程度超音波を照射しても余り効果的ではなかった。もっとも、超音波の周波数を変えたり、照射方法を工夫すれば、より効率的に味が浸透するかも知れないが、ここにあるのはボロっちい洗浄機なので、味浸透効果向上を狙って塩酸処理も行うことにした。



次に、50度C程度のお湯を作り、なるべく飽和状態に近い食塩水を作る。ここでは、赤穂の天塩を使い、また市販の味付けゆで卵と同じように、味の素も少々入れた。多く入れると美味しくないが、多少は入っていても良かろう。また、食塩水が濃くなるにつれ、単に混ぜただけでは食塩は溶解しにくくなるが、溶けない食塩は洗浄漕にぶちこんで超音波を照射すると、勝手に溶けてくれる。
なお、これは間違った洗浄機の使い方です。ステンレスも極端な状況下では錆びますので、洗浄漕に食塩水や味の素を入れると、痛む可能性は大いにあります。ゆで卵の製造により、洗浄機が壊れても、Webmaster は一切担保致しません。



超音波照射中の卵。照射時間は、どのぐらいすれば良いのか分からないので、取り敢えず15分とした。よく見ると、卵の随所から細かい気泡が出てきてる。卵にある空洞の部分に、周りの液体が浸透しつつある証拠のようにも見えるが、それは剥いてからのお楽しみだ。それ以外に変わった様子は特にないと思われたが、



ビシバシと超音波にやられたためか、ヒビが入ってしまった。塩酸で処理していない卵は割れなかったことから考えて、塩酸のせいで殻が弱ってしまったのだろう。これでは、厳密に殻がついている状態とは言えないので、塩酸の濃度を薄くし、やりなおしてみた。150ml の水に、35% の塩酸を数滴入れる程度にすると、割れずに超音波照射を耐え抜いた(が、この辺は卵の質にもよるようだ)。



ゆで卵なので、当然ながら茹でなければならない。塩酸+超音波照射後の卵を、飽和に近いぐらいの食塩水で7分ほど茹でる。そして、超音波照射を行ったゆで卵を剥くと、普通のゆで卵には無い水が少量だが、流れ出てきた。従って、超音波照射の過程で液体が中に浸透しているのは、確かだと思う。さてさて、結果は如何に?



食べてみると...うっすらと塩味がついているが、期待したほどでも無く、塩酸処理をぜずに超音波照射したゆで卵とさほど変わらなかった。剥くときに流れ出てきた水を舐めてみると、若干の塩味は認められたが、飽和寸前である食塩水の味からは程遠い。すると、この卵は、水の分子は透過できるか、塩の分子は透過できないようなフィルタと化しているのか? 前述した通り、塩酸処理の効果が良すぎて殻が割れてしまい、塩酸の濃度を薄くしたが、今度はそれが裏目に出たのかも知れない。

例え超音波照射に効果があるとしても、食塩水を殻を通して浸透させることは、簡単ではないようだ。今回はやや不本意な結果となったが、まだ改善の余地は色々とある。ただ、唯一の問題は、試行錯誤しているうちに昨日と今日で計7個のゆで卵をで食べ、ゆで卵が嫌いになったということである。


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