Lava Lampを作ろう1


ベンジルアルコールの話で少し触れたこちらのサイトで紹介されている物体は、Lava Lamp(ラバ・ランプ)と呼ぶらしい。そのサイトでは、筒の中に入っている液体の成分を予想して幾つかの組み合わせを挙げているが、突撃実験室では、その中の食塩水とベンジルアルコールを使うことにした。今日は、これを成功させるべく色々と実験をしたのだが、結論から言うと第一回目の実験は失敗であった。というわけで今回は失敗談をお伝えする。

Lava Lamp がどういうものかを簡単に説明すると、二種類の液体が入っている透明の筒と、それを明るく照らすとともに加熱するための電灯が入った土台とで構成されている。電灯をつけると、その熱で筒の中の液体が暖まり、冷えているときは底に沈んでいる油のような液体がじわじわと筒の中を浮上し、筒の上の方まで上り詰めるとまた冷えて沈む、という動作を延々と繰り返す。そのデロデロとした様子が溶岩に似ていたことから、Lava Lamp と名付けられたのだろう。

底に沈んでいる液体が浮く原理は、全体に入っている液体よりも心もち比重の大きい液体を使っているところに秘密がある。電灯の熱により底に沈んでいた液体が加熱されると他の部分に満たされている液体よりも軽くなり、浮力によって浮くという単純なものだ。しかし、実際にやってみるとわかるのだが、これをうまくやるには多くの条件を巧妙に満たしている必要があり、液体の選定から熱源の置き方まで、どれも一筋縄ではいかないものだった。

まずは、こいつを固定する土台を作らなければならない。土台だけなら簡単なのだが、熱源となる電灯も含める必要があるため、耐熱性なども重要となってくるのだ。実際に東急ハンズで売り物の Lava Lamp を見てきたところ、液体を加熱して浮上するに致させるにはそれなりに暖める必要があるらしく、土台を手で触ると火傷するほどの温度であった。これをどうにか安く仕上げる方法は無いかと、渋谷の東急ハンズで悩むこと約二時間。こんなものを買ってきた。



電球ソケット、40ワットのスポット電球、それからソケットサイズの変換器と、金網の電球カバー。電球ソケットは、電球カバーを取り付ける都合上、直径26ミリのものを使う事にする。ところが、26ミリソケット用のスポット電球は大きすぎるものばかりで使うことができず、やむなくソケットの直径を変換するアダプタと、17ミリソケット用の小型スポット電球を買ってきた。



これらを組み上げると、こうなる。見るからに安定が悪そうだが、取りあえず気にしない。金網の電球カバーは、よく工事現場で裸電球につけてあるようなアレだ。コレニ、フラスコを乗っけると、ちょうどいい具合に固定してくれるのだ。このとき、何も乗せずに電球の表面温度を測ると、摂氏180度程度であった。恐らく、液体を加熱するには十分であると思う。



いい感じ(笑)

さて、土台は完成した。次は、液体が Lava Lamp としてちゃんと動作するかどうかが問題だ。先にリンクしたサイトによると、ベンジルアルコールと水だけではベンジルアルコールの比重が大きすぎて加熱しても浮上しにくく、水に食塩を混ぜると良いらしい。なるほど、食塩は、多く入れれば入れるほど水の比重が大きくなり、ベンジルアルコールは浮きやすくなるだろうが、入れすぎると飽和して水が曇ってしまうというジレンマがある。

実際にどの程度の濃度が最適なのか、よくわからない。そこで、食塩水の濃度を徐々に濃くしながら、電気コンロに置いて実験してみた。



すると、ある濃度(秤がないので、良くわからない)の食塩水では、ベンジルアルコールの温度が60度を超えた辺りから、浮上しようと「努力」を始めた。ご覧のように沈んでいたものが玉になり、浮こうとしているのが分かるだろう。しかし、ここから先が一筋縄ではいかないのだ。加熱を続けると、食塩水の温度が50度を超えてしまい、そうなると食塩水の比重まで小さくなってしまうので、ベンジルアルコールは浮くことができなくなる。

なかなか上手くいかず、ベンジルアルコールを変えたり食塩水の濃度を変えたりしてみたのだが、やっぱりダメだ。それも、食塩水いつの間にか飽和してしまって冷えると真っ白になってしまった。手強し Lava Lamp! どうすれば浮くのか。もう一度、整理してみることにする。



上図をご覧頂きたい。ベンジルアルコールを浮上させるには、ベンジルアルコールのみを加熱するのが理想的だが、水の温度上昇を完全に防ぐことは不可能だ。従って、いかに水の温度上昇を防ぐかという点も非常に重要になる。容器の中では、暖まった水は容器の上部へと上昇し、冷たい水は容器の下部に溜まるはずである。このような温度差のある水中では、ベンジルアルコールは比較的冷たい水の中ではうまく浮上するはずだが、暖まった水の溜まったところに到達すれば、比重の関係から浮上しなくなる可能性が高い。従って、容器の最上部の水は暖まっていても構わないが、残りの大部分は、冷たい水で満たしておかなければならないだろう。

また、水の温度上昇を防ぐには、ベンジルアルコールがフラスコの底に絶えず溜まるようにする必要がある。なぜなら、直接加熱を受ける底にベンジルアルコールのみが存在すれば、水は直接的に加熱されないが、ベンジルアルコールが底から無くなれば、水が直接加熱され、水の温度がより早く上昇してしまうからだ。ベンジルアルコールの一部が浮上しても、底に十分の量が待機しているよう、量を調整すると良いはずだ。

これらの話を総合して考えると、200mlのフラスコという容器に問題があるように思えてきた。まず、暖められた水は上部へと上昇するが、三角形のフラスコでは、その「上部」の容積が下部と比べて狭い。そのため、暖かい水は「上部」のみではなく、容器全体に充満してしまうだろう。さらに、容器の容量も小さすぎるようだ。ベンジルアルコールはある程度まとまって浮上するため、常に予備を底に溜めておく程の量を入れておけるぐらいの容器が必須となる。また、この大きさでは水の温度も直ぐに上昇してしまう。

このような考察の結果から、もう少し高さがあり、図中の「良い例」にあるような筒状の容器が望ましいという結論を得た。試しにビーカでやってみたのが、この写真だ。



結果はご覧の通り。やはり、フラスコではダメだったのだ。しかし、こいつの食塩水も、常温では飽和状態なのだ。もう少し大きな容器を用いるなど、食塩の濃度を薄くしても効果のあるよう工夫する必要がある。

本意としてはフラスコサイズのミニチュアな Lava Lamp を作りたかったので、少し残念...
それに、見切り発車で作った土台はどうなるのだろう...


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