多事毒論(2004年6月分)


ICテレホンカード
2004年6月29日(月曜日) はれ

帰宅ラッシュの時間帯,駅の公衆電話に長い行列ができていた光景を思い出すと,もうかなり懐かしい感じがする。携帯電話を使うようになってから,公衆電話を使う機会がほとんどなくなってしまった方も多いだろう。その結果,テレホンカードってやつを持ち歩いている人もだいぶん減ってきていると思うが,かくいう自分の財布には,使いもしないテレホンカードがつい最近まで入っていた。しかも貰い物なんかではなく,磁気式のカードに代わって登場した「ICテレホンカード」が使いたくなって,わざわざ買ったヤツだ。実際には,一度かそこら試しに使って以来,数年間ほど活用する機会がなく眠っていたのだが,なんかの事情で国際電話をかけたときに,一回だけ役に立ったことがある(わたしの携帯からは国際電話がかからないので)。

その後も何年か,使われることもなく財布のなかに入れっぱなしにしていたら,経年変化で表面の被覆が剥がれてきてしまった。なんか,このまま剥いてくださいと言われているような気がしたので,さらにドライヤで炙って被覆を取り去ってみた。まず目に入るのは,透明なプラスチックフィルム基板に形成されたアンテナコイルだ。ご存じの方も多いと思うが,ICカードのICは,このコイルに誘起される電力を電源としてリーダと通信している。そして,ICカードと言われる所以のICがこれ。コイルの部分は,円の内側にある終端が巻線を横断しないといけないので,両面配線になっており,スルーホールみたいなものもある。写真右上の行き止まりパタンは,コンデンサになっているんだと思う。また,新品のICテレホンカードは,隅の部分を切り落とさないと使えないようになっているが,その部分は配線が切断される仕組みになっていた。

ちなみに,ICテレホンカードには有効期限があり,これを過ぎると使えなくなるが,期限後5年間は交換してくれるらしいが,被覆を剥がした状態でも持っていけば対応してくれるんだろうか。機能的には問題ないはずなので,リーダに載せれば読めるはずだけど・・・。



罰金壱万円
2004年6月24日(木曜日) はれ/曇り

勤務先の事務所にやってくる,つまらん訪問販売やら飛び込み営業やらを,自主的かつ平和的に帰らせるための「お断り」表示については,ここで過去に何度となく述べてきた。いちばん初めには,呼び鈴のところにごく単純な「お断り」表示を掲示したわけだが,明らかに表示を読んでいるにも関わらずやってくるクソ野郎が後を絶えず,普通の「お断り」だけではほとんど効果がないことが次第に明らかとなった。そこで,相手の出方を精査しながら言い逃れがより困難な強烈な文言を検討し続けてきたというのが,これまでの大まかな経緯だが,思えばこの問題とはもうかなり長い付き合いである。「お断り」というシンプルな表示にみんなが素直に従ってくれさえすれば苦労はないのだが,残念ながら現実には,こんなものはいとも簡単に無視される。無視されるどころか,「こういうのを貼るのは,断るのが苦手だから」という,逆の解釈もあるのだとか・・・。ざけんな。

これまでは「訪問販売・営業(挨拶を含む)お断り」と「言い訳・屁理屈無用。日本語を理解しない業者とは取り引きしません」の二本立てで訪問販売やらの阻止を図ってきたわけだが,これだけ嫌みったらしく書いても挑戦してくる輩もいないわけではないので,さらに効果の高い対策が必要になってきた。そして最近,かなり効果的であると判明したのが「罰金壱万円」という文言である。そこらの月極駐車場でよく見かける脅し文句と同じじゃないかとか,ありがちすぎて信憑性に欠ける,という指摘もあるだろうが,それは書き方次第だ。すなわち,ただ「罰金壱万円」などと書くのではなく,「違反者は罰金壱万円強制徴収します(逃がしません)」とやるのだ。このうえ,「脅しではありません」という文言と,交番の前に掲示されている交通事故件数の表示を真似て,「現在までの徴収件数○件」という表示も付け加えた。もちろん,件数の数字だけは手書き。ここまでやると,ただの脅しなのか本気なのか,よく分からなくなってくるだろう。

度重なる改良の結果,職場の玄関は現在,怪しげな表示のオンパレードになっていたりする。いや,怪しくていいのだ。文言の内容はともかく,なんだか危なげなオーラを感じて「ここはよそう」と思っていただければ,これに勝る本懐はない。



ねこ
2004年6月23日(水曜日) はれ

台風一過でクソ暑い。近所のにゃんこたちもくたばり気味のようで,日陰で寝てた



健康診断
2004年6月21日(月曜日) 雨/暴風

健康診断のため,朝から病院へ。その総合病院は,もともとホテルとして建てられた建物をちょっとだけ改修して使っているらしく,看板に病院とあり,一階ロビー前の車寄せに「救急入口」みたいなことが書いてあるのを除けば,外観はホテルそのもの。受け付けはどう見てもホテルのフロントそのまんまだし,雅やかな模様の入った分厚い絨毯で飾られた通路はまさにホテル仕様であるが――そんな通路には,ストレッチャなどという,ホテルでは禁忌であろうものが置かれていたりする。ストレッチャっていうのは,リノリュウム床の上を走るものじゃないのか? 果たして場違いなのは,ストレッチャなのか絨毯なのかと,かなり悩みながら健康診断をやっているところへ向かうと,そこはもともと,大会議室か何かだったらしく,高い天井には煌びやかなシャンデリアが灯る。果たして場違いなのは(以下略)

で,辛かったのは,初めて経験したバリウムによる胃の検査。はっきり言って,あれは拷問であった。胃を膨らまされたうえに,バリウムを飲まされた挙げ句,身体を逆さまにされたりで,できればもう二度とやりたくない。渡された下剤を飲んだせいで下痢ピーだし,まだ,バリウム攻めをやられたときの気持ち悪さがちょっと残ってる感じ。

帰り道,強風で傘の骨がぶち折れた。ああ,高かったのに・・・。



架空請求
2004年6月18日(金曜日) はれ

勤務先のある人物あてに,最近流行っているらしい架空請求ハガキが届いた。カタギとは言い切れない人間ばかり集まっている職場であるから,当然ながらこんなものでいちいちビビったりするわけはなく,笑いのネタとして回覧に供されただけだが。しかしまあ,もうちょっと信憑性ってやつを感じさせる文面にできなかったんだろうか。仮に架空請求という犯罪形態が世の中に認知されていなかったとしても,全体的にどうにも意味不明で下手くそな文章を読んだ時点で大方の人はヘンだと感じるだろうし,会社宛に送ってきておいて,「親権者又、ご勤務先にご連絡させて頂きます」なんて書いてあるのもかなりどうかと思う。わざわざご丁寧に勤務先へ連絡していただかなくても,すでに回覧されてるんですがねえ。ちなみに,宛名面には,DMっぽい宛名ラベルがいかにも投げやりって感じの角度で斜めに貼られており,消印は「板橋北」となっている。

こんな馬鹿馬鹿しいものでも,払ってくるカモが確実に見込め,ビジネスとして成り立つから送っているんだろう。しかし,カモはいったいどのぐらいの確率でいるのだろうか。一通送るのに,少なくとも50円はかかるから,たとえば1万通送ったら,その分の郵送料を回収するだけで50万円は稼がないと商売にならない。で,少し古い資料だが,Yomiuri Weekly の記事には,カモの客単価は「約17万円」とある。実際にだいたいこんなもんだと仮定すれば,1万通送って最低4〜5人のカモが捕まらなければならないわけで,率にすると2000人に1人程度か。このぐらいならいそうな感じもするが,実際には,もっと多くのカモがいたり,客単価が高かったりするのだろう。でなければ,敢えてこんなハイリスクなシノギはやらないだろうから。



グリーンレーザ
2004年6月17日(木曜日) 曇り

Fast & First の Webmaster がハマったのを嚆矢として,職場ではグリーンレーザが大ブームになってしまい,みんなして緑色のレーザポインタなんかを買っていたりする。なぜハマるのかというと,波長 532nm のグリーンレーザは,普及品のレーザポインタから放たれる赤色の光とは比べものにならないほど明るくて美しいから。レーザポインタに使われているのは 5mW 未満の小出力レーザなので,コンサート会場とかの演出でやっているようなレーザショーほど派手な感じにはならないけれど,緑は視認性がよいので,こんなものでも薄暗い場所では一直線に伸びる光線を十分に視認できる。赤色のレーザポインタでは,煙が充満しているようなところでなければ筋が見えないので,想像していたレーザ「光線」ってやつとは違うじゃないか!と裏切られた気分になった人もいることだろうが,緑色のレーザポインタならいかにもレーザっぽい筋が見えるから,きっとそんな思いをせずにすむ。

そんなわけで,ブームに載せられてわたしが買ったのは,共立電子で売っている緑色レーザダイオードモジュールだ。レーザポインタの中身になるものであり,これを電池などと一緒に筒に治めたものが,レーザポインタとして売られているわけである。点灯すると,壁に緑色の点が映るのは普通のレーザポインタと同じだが,暗い場所なら先にも述べたとおり光線がちゃんと空中に現れる。普通の室内なら,数十万個/立方フィートというオーダでチリやホコリが浮遊しているから,それらに乱反射して光が見えるわけだが,タバコの煙なんかがあればよりはっきりとした筋になる。夜間なら,屋外でも空に向かう光芒を観察でき,雲が低ければ雲に緑の印を付けられるはずだが,昨日は雲が高かったので,無理だった。自宅から2キロほど離れているランドマークタワーの壁面にも照らしてみたけれど,これも届かず……空気が澄んでいる雨上がりならできるかなあ?

ちなみに,共立電子のモジュールは,国内で買えるグリーンレーザとしては安い方だと思う。半導体のグリーンレーザは,DPSS (Diode Pumped Solid State) レーザと言って,まず 808nm の赤外線レーザダイオードでYAG結晶を励起して 1064nm の赤外線を作り,それをまた非線形結晶(要するに光学的な周波数逓倍器ですか)というものにぶち込んで,半分の波長である 532nm を得るという構造になっているらしいので,レーザダイオード単独で作れる赤色のヤツよりも値段が張るのだ。



デジカメ破損事故
2004年6月16日(水曜日) はれ

車から降りるときに,デジカメを入れていたカバンを地面に落としてしまい,ぶっ壊してしまった。ちょっと前に買った D100 でなく,いまはマクロ撮影とスナップ専用に使っている Coolpix E990 だったのでまだ良かったんだけど,これはこれで,一眼レフには適さない(大袈裟すぎる)場面で重宝しているので,使えないのは困るのだ。故障状態としては,本来なら電源を入れた際に,ズームの可動レンズを動かすサーボが動作して,可動レンズの位置キャリブレーションが行われるようになっているのだが,ズームレンズが動かなくおり,サーボが空回りしているような,「ガリガリ」っとした音が聞こえてくるというもの。外観上,何かが割れているというような壊れ方なら最悪だが,これぐらいならまだ軽傷と思われたので,とりあえず光学部分を分解してみることにする。

ネジを抜いてマグネシウムか何かでできている感じの外ケースを取り外し,さらにその内側にある樹脂カバーを開けると,レンズのアセンブリのほか,光学ファインダや,CCDが実装されている基板,ストロボの回路なんかが出てくる。この状態で調べてみたら,ズームの可動レンズが案内軸から脱落しており,レンズが動かなくなっていることが分かった。その結果,可動レンズの位置決めをやっている送りネジが回ると,ナットが空回りしてしまって「ガリガリ」と鳴っていたわけだ。が,原因が分かっても色んなものがぎっちりと詰まっている状態では治せないので,さらに,レンズアセンブリのハウジングにネジ止めされている光学ファインダや,フレキシブル基板,CCDなども取り外していく。ついでに,デジカメのCCDを見たのは初めてで,素子部分は,どういうわけか無色でなく淡い水色のガラスで覆われていた。

幸い折れているような部品はなかったので,レンズを案内軸に戻しただけでズームの不具合は修理ができたが,さらに調べると光学ファインダの部品が一つ折れていて,これは修理不能だった。まあ,光学ファインダなんてほとんど使うことがないので,これはどうでもいい。最後に組み直して終わりだ。狭いところに詰め込んであるわりには,意外と組みやすいなという感じ。



ねこ
2004年6月8日(火曜日) 曇り/晴れ

別にエサをあげたりしているわけでもないのだが,どういうわけか近所のノラネコさんがうちに居着くようになってしまった。家のドアの前に先回りしてきては,ドアを開けた途端に入り込んで,さも当然という感じでドカッと座り込むのだ。しょうがないから削りぶしの空き袋をあげたらしばらくそれに集中していたが,どうもこれだけでは満ち足りないご様子でなかなか出て行ってくれず,追い出すのに一苦労。夕食に買ってきた刺身を狙ってたのかも知れないけれど,あげないもんね。



雨男
2004年6月7日(月曜日) 雨/曇り/晴れ,et al.

わけのわからん天気だった。朝から何度か大雨が降っていた気がするのに,持っていった傘は邪魔な荷物となっただけ。帰宅するころには,鉛色の分厚い雲もどこかに消えてしまい,沈みかけた日が眩い雨上がりの青空が印象的だった。世界で五本の指に数えられる雨男であるわたしにとって,ここまでうまく雨が避けていくというのは,まずあり得ない現象だ。洗車は雨乞いの儀式だと思っているし,旅行に行けば台風が来たりする。運が良ければ拝めるらしい御来光ってやつを見に行けば,たいてい雲海ツアーか何かになるから,そういうのを見たいヤツは山にはわたしと来ちゃいけないのである。前世は,アメフラシだったのかなあ(たぶん無関係)。それにしても,雨男体質はなんとかならんものかと思う・・・。



住所を考える (1)
2004年6月1日(火曜日) 雨のち曇り

仕事の帰りに近所のネコさんと遊んでいたら,なんの遠慮もなくよじ登ってきて,膝の上を占領。カメラのストラップが気になるらしく,しばらくはこれで遊んでいたが,なに撮っとんじゃと,撮影拒否のねこパンチ

横浜市の地理は,政令指定都市のなかではかなり難解な部類に入ると思う。都市が湾に沿って形成されていて,そのうえ丘陵地が多いという地理的な条件から,道路が碁盤の目になっているのは商業地ぐらいで,たいていの道で多かれ少なかれ曲がりくねっていて,変則交差点や急坂といったものが随所に点在する。それだけでも訪問者の方向を見失わせるには十分だが,さらにややこしくしているのが,住居表示実施率の悪さだ。住居表示ってのは,飛び飛びで複雑な地番をそのまま使った「毒論町△番地」みたいな形式の住所を,「毒論○丁目□−△」みたいな理路整然とした表記に整理したものだが,これが行われていない場所が多く,しかも区によってはその場所の住所が書いてある「街区表示板」があまり設置されていないので,現在位置を知るのも大変だったりする。そんな場所で頼りになるのは,電柱広告の下に小さく書いてあるぐらいだ番地表示だ。

このような具合なので,大阪出身のわたしにとって,横浜の複雑奇怪な住所システムにはちょっとしたカルチャーショックを覚えた。というのも,大阪府の市町村は住居表示の実施にかなり熱心なので,整理されていない住所や,住居番号表示がないことで苦労した経験がほとんどなかったからである。大阪市は全国で唯一,住居表示実施率100%を達成している政令指定都市であったりするし,大阪市以外でも,市街地なら多くのところで住居表示になっている。したがって,交差点の角や電柱などに,縦長のプレートである街区表示板が設置されていてその場所の地名が明示され,なおかつ各建物には町名板と住居番号表示板が掲げられているのは当たり前だと思ってたし,○番地なんていう住所は,人里離れた山奥だけのものだ,ぐらいに思っていた(実際そう言っても差し支えはないぐらいに整理されている)。

こんなことを題材にしてみようと思ったのは,配達の仕事をしている人と話していたときに,最近神戸から来た新人さんが横浜の複雑な地理に苦慮しているという話が出てきて,そういえば自分も,難しいところに来ちゃったなと感じたことを思い出したからだ。神戸も,横浜に比べれば遙かに分かりやすいから大変だろうなと思う。わたしも過去形で書いちゃってるけど,実はいまでもかなり苦労しているし,そんなだから,日本の住所体系に関しては言いたいことが山ほどあるもので。



突撃実験室